密やかな結晶

もし言葉が消えてしまったら、

どうなるのだろう。

密やかな結晶 小川洋子 講談社
2020年ブッカー国際賞最終候補作

その島では、ある日突然になにかが消え去ってしまう。

そのものに対する人の記憶も、一緒に。

それがどんなに大切で、濃密な記憶であったとしても・・

思えば、わたしたちも、知らない間に様々な物を失い、

そして、いつの間にか、忘れ去っているのでしょう

最初に読んだ時、私は、登場人物の一人の言葉に、心がすとんと

本当にすとんと、硬くなりかけた心がすっと救われました気がしました

慣れ親しんだ日常を失い、誰しもが懸命に心を保とうとしている今、

小さな言葉の結晶を紡いだこの密やかな物語の記憶は、

読んだ人の心の奥底に、そっと、寄り添い続けることでしょう

理屈から自由になり、矛盾を受け止める必要に迫られた時、人は自然と文学に心を寄せるようになる

死者の声を運ぶ小舟 ’ニューヨークタイムズ 2020.8.6′  小川洋子