今は英国で暮らす主人公悦子の、
”それまでにくらべると一息ついた穏やかな時期”の長崎での
遠い昔あるひと夏の記憶 ー
出産を控え穏やかな暮らしをしていた悦子は
川岸のあばら家に暮らす佐知子と親しくなります。
安定した暮しを自ら懸命に肯定しようとする悦子と
先の見えない未来に突き進んでいこうとする佐知子
一見、相容れないように思えた二人の女性に瞬間折り重なる人生の交錯 ー
好景気に沸いた戦後にも、復興から取り残された人や
忘れられない記憶から必死に前を向こうとする人がいたこと
”あなたの人生はこれからなのよ”
長崎の海の先に美しい山なみ、戦後を懸命に生き抜いた人たちの
この物語の記憶は
いつかあいまいになろうとも、今はただ静かな余韻に浸って…
映画もお薦めです
「そう、何もとくべつなことはなかったの。ただの幸せな思い出、それだけだわ」
遠い山なみの光 カズオ・イシグロ 小野寺健訳 早川書房