これといったことはなにもなしに

__ ただ、瞬く間に。

イラクサ アリス・マンロー 小竹由美子訳 新潮社

それは、なにげない日常の、煌めくような瞬間だった…

これから待ち受けているであろうものに

『浮橋』のように揺らぐ心

人生を変えてくれる「なにか」を期待して ー

送りたいと思っていた人生と、

送っていたかもしれない別の人生 

長く短い人生のストーリーの中で

”奇跡”のようなその瞬間の’記憶’は

心の深いところでほのかな光を発する宝石のようで

ただただ一生懸命に、

神様に願いごとをした子供のころのように

甘く、ほろ苦く、美しく、切ない、記憶の欠片

それがわたしの望んでいたもの、それがわたしが留意せねばと思っていたこと、それこそわたしが送りたいと思っていた人生だった。

イラクサ アリス・マンロー 小竹由美子訳 新潮社