コロナ禍をきっかけにブログをはじめて三年がたちます。
その間、世界各地で争いはやまず
年始には、大地震が能登の大地を揺るがしました。
今年の最初の一冊について考え、迷い
ふと、思い浮かんだのが、カーヴァーのこの物語です。
ー A small,good thing 『ささやかだけれど、役にたつこと』
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予約しておいた誕生日ケーキがパン屋で焼きあがったその日の朝、
若い夫婦は突如、かけがえのないものを失うかもしれない出来事に見舞われ
深い苦悩と失意の数日間を過ごす
順風満帆そのものだった人生 ー
この先もつづくはずだった幸福な日々は、
たった一日、たった一瞬で、暗い闇へ引っ張られ
そして、その間も、世界中のパン屋では毎日毎日たくさんのパンが焼きあがるということ…
若いころにほんのり感じた ”永遠ではない人生”は、
年齢を重ねた今は、人生そして世界の多くを蔽う”ささやかな日常”に
しみじみ心が向きます。
物語の最後、焼き立てパンのほんのり甘い香りに包まれ
語りあう彼らに朝の日の光が射し込みます。
これから先まだまだつづく道は決して平坦でないかもしれない、けれど
朝はかならずやってきて
食べて、そして生きて、と
「何かを食べるって、いいことなんです」
ささやかだけれど、役にたつこと THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER3
”大聖堂”より レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 中央公論新社