ある日突然、愛する夫を失ってしまった主人公の喪失感
幼い頃に消えた祖母の記憶とも重なり
奥能登で穏やかな生活を得て尚、消えることのない「なんで?」の問いに
以前読んだときには思い至っていなかった、
「生きていく中でどうすることもできないこと」の存在を
今は重みを増して感じます。
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20代の頃に冬の能登半島を旅しました。
途中下車して鐘を鳴らした恋路海岸
真っ暗闇の日本海に吸い込まれるように降る激しい雪や
冷たい風がごぉごぉ鳴る曽々木海岸で見た灰色の空と
荒々しい波にぷかぷか浮かぶ白い波の花
能登の厳しさの中にある温かみの情景は私の心に深く刻まれています。
光と影、過去と現在、寄せては返し漂いながら
今日から明日へ、一日一日冬を越す
沖に出るには命懸けの海だけがよるべやった奥能登の人々が、いったいどれほどの智慧と忍耐で生き抜いてきたのか
幻の光 宮本輝 新潮文庫