初読時中学生だった私にとって未知の大国である中国の
とてつもなく広大であろう黄土に、想像を膨らませ読んだのを覚えています。
かつて「土地さえあれば」生きていく希望があったその土地すら
孫の代には不確実なものになっていく
いつか古い伝統が途絶え、新しい時代の波が
いやおうなしに押し寄せるだろう、けれど先人の汗滲む土は
我々の体に揺るぎなく息づいているということを強く感じます。
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この本を再読している時に、ちょうど訪れた大阪万博の中国館で
館内の丸いスクリーンに映しだされた美しい四季の映像に心打たれました。
そして、木壁を上から下へと流れていく漢詩の一部がふと目に留まりました。
農を憫(あわれ)む(その二)
鋤禾日当午、 禾(か)を鋤(す)きて日午(ひご)に当たる、
汗滴禾下土。 汗は滴(したた)る禾下(かか)の土。
誰知盤中餐、 誰(たれ)か知らん盤中(ばんちゅう)の餐(さん)、
粒粒皆辛苦。 粒粒(りゅうりゅう)皆(みな)辛苦(しんく)なるを。
『読んで学ぶはじめての漢詩~情感編~』憫農より
文:張文俊 訳:TransPerfect ベネッセコーポレーション
「お椀に盛られたごはんの一粒一粒が、苦労の結晶だと誰が知っていよう」(現代語訳)
大地へ思いを新たに…
春の小麦の上に背をまげてかがみこんでいる農夫のすがたが、ここかしこに青い点のように見え、それが静止したり動いたりしていた。
世界文学全集20 大地 パール・バック 大久保康雄訳 河出書房