詩集 空に小鳥がいなくなった日

そこに朝があった

空に小鳥がいなくなった日 詩集
谷川俊太郎 サンリオ

ふと思い出す谷川俊太郎さんの詩には、”朝”の詩が多い気がします。

眩しい日の光、夜が明けて朝を迎えるという毎日の当たり前なことが

純粋な喜びとして、詩や言葉のそこここに溢れでています。

朝のかたち

昨夜から思いつめていたことが
果てのない荒野のように夢に現れ
その夢の途中で目覚時計が鳴った
硝子戸の向こうで犬が尾を振り
卓の上のコップにななめに陽が射し
そこに朝があった

朝はその日も光だった
おそろしいほど鮮やかに
魂のすみずみまで照らし出され
私はもう自分に嘘がつけなかった
私は〈おはよう〉と言い
その言葉が私を守ってくれるのを感じた

朝がそこにあった
蛇口から冷たい水がほとばしり
味噌汁のにおいが部屋に満ち
国中の道で人々は一心に歩み
幸せよりたしかに希望よりまぶしく
私は朝のかたちを見た

『空に小鳥がいなくなった日 詩集』より 谷川俊太郎 サンリオ

私は、朝のまだ明るくなる前の薄明の空が好きです。

空が白み始める頃、夜に活動していたものたちが眠りにつき

眠りから覚めた家の明かりがぽつりぽつり点き始める時

一日の終わりと一日の始まり

「おはよう」