「どうして私がその「物語」を手に入れたかというとー」
千一夜の夢のように登場人物が現れては消え、消えては現れ、語りだす
語られているその物語の世界が本物なのか、果は今いるこの世界は贋物なのか…
誰も最後まで読み終えることができないという謎の本「熱帯」を巡って
この物語の門はここに開くー
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今年3月、私はこの物語の門をくぐろうとした
一度目は読み始めて途中で断念し、
二度目は読み終えたもののこの奇怪な”熱帯”の世界に頭がくるくる回る有様
物語の門を前に立ち尽くす自分が情けなく、あまりに無念で
是が非でも謎を解かねばならぬ、
そのためにはもう一度読まねばならぬと臨んだ三度目、私は
なんともいえず清らかな気持ちで読み終え本を閉じた…
あ、これは森見氏の「熱帯」だったんだ!!と
青い海の真っ白な砂浜で、あるいは提灯の明かり灯る雪の降る夜に、
謎は謎のまま、”存在と非存在の狭間を漂う無数の断片”を掬いあげ語られた物語
”物語ることによって汝みずからを救え”
「熱帯」の門をくぐり、この物語に出会えた私は、
夢と現実とをつなぐこの世界の穴を夢想しながら
これを読んでくださったあなたにもこの物語をつなげたい
一冊の本を手に取り、項を開いたとたん、特別な時間が流れだす。それまでは何もなかった空間を言葉が充たして、土地が生まれ、草木が生い茂り、人間が生き始め、そこに世界が現れる。
熱帯 森見登美彦 文藝春秋


